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『夢のある部屋』      澁澤龍彦 著 /河出文庫 730円
何冊目の澁澤だろう? 
とにかく澁澤の著書ならば、なんの迷いもなく買う自分がいた。
そうやって10代、20代と年を重ねる度に、一種の儀式のように買い続けた。
それは、永遠に続く果てしない愉しみになるはずだった。
新刊が出る度にワクワクしていた、その愉しみは、友人の27回目の誕生日に 突然幕を下ろした。
暑い昼下がりに亡くなった澁澤は、読書中だったと聞く。
あぁ、澁澤らしい最期だな、入院中ではあったが、本を手中に息絶えるとは!
あれからというもの、何年も新刊は出ていない。
特集本は出る度に買っても、書き下ろしは存在しない。
終わりを考えていなかった、延々に読めると何故か信じていた澁澤の本を 突然、取り上げられたようで 途方にくれ続けたこの10数年。
先日 本屋で澁澤龍彦の文庫本の平積み台置きを見た時は、久しぶりに心臓が 高鳴った。こんなにドキドキしたのは、何年ぶりだったろう?
”待ちわびた” という感覚のなんと新鮮なことか。
鳥肌がたっていた。
没後、新たに未発表の原稿が見つかり出たわけではない。
よくある既出の作品の編纂モノではあったが、それは実に堂々と新刊コーナー で輝いていた。これは装丁の勝利だ。
表紙は私の理想の部屋である "澁澤の書斎” と "澁澤邸の居間” を上手い具合 に 配分した写真なのである。
この表紙に730円。   よし、買った!
実は、内容を話すと、別にめくるめく夢のようなお部屋の話なんざぁ・・・
ほとんど無いんです。
澁澤ファンには、この文庫本の表紙とタイトルだけでイイんです。
それを日がな一日眺めながらニヤニヤしてるだけでイイんです。
そんな種類の本なんです。200頁で730円はベラボウなんです。
だから『”大人買い” の文庫本』と命名しちゃいます。
書評 / 林太郎M.K.
 
 
 
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